性感染症の一つ、尖圭コンジローマは、陰茎や腟や肛門にイボができる病気です。
ニワトリのトサカのようなごつごつしたイボが、沢山できることもあります。見た目にもグロテスクですし、治りづらかったり、再発を繰り返す場合もあり、精神的にもストレスの強い感染症です。
そんな厄介な性感染症ですが、実はこの尖圭コンジローマ、予防できるワクチンがあるのをご存じですか?
コンジローマの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因です。
「ヒトパピローマウイルス(HPV)」って、もしかすると聞いたことがあるかもしれません。そう、子宮頸がんの原因となるウイルスも、HPVなのです。
といっても、完全に同じというわけではありません。
HPVには、すごくたくさんの「型」があって、尖圭コンジローマと子宮頸がんは、原因となる型が違います。
- 子宮頸がんの原因: 16,18型など(高リスク型HPV)
- 尖圭コンジローマの原因:6,11型など(低リスク型HPV)
これらの他にも100種類以上の型があって、カラダにできるいろんなイボは、ほとんどHPVが原因です。例えば、おじいちゃんの顔にできているようなイボも、HPVが感染することが元々の原因です 。
コンジローマは、どうやって予防できる?
性感染症の予防といえば、コンドームですが、HPVについては、残念ながらその効果は限定的です。と言うのは、HPVがすごくありふれたウイルスであり、性器などの接触によって感染するからです。女性の8割が一生に一度は感染していると言われる程です。
誤解しないでいただきたいのは、HPV感染した人のすべてが子宮頸がんになるわけではありません。例えば、HPVが感染したとしても、自然にいなくなる場合もありますし、持続的に感染を起こしている人でも、癌に進行する人は100人に1人以下です。
コンドームで防ぎにくく、ありふれたウイルス。でも一部は「子宮頸がん」に進行する可能性がある、そんなリスクを伴うウイルスの影響を抑えるために、そもそもの感染自体を防ぐ「ワクチン」が開発されています。それが「HPVワクチン」です。
そして、このワクチンが同時に「尖圭コンジローマ」も予防することができるのです。
HPVワクチンの種類
HPVワクチンには、予防できるHPVの型によって、2価・4価・9価といった種類があります。
2価・4価…というのは、予防するHPV型の数を表していて、4価とは、高リスク型の16,18型と、低リスク型の6,11型の代表的なHPVの4つの型を予防することができるワクチン、という意味です。
HPVワクチンは男性にも接種可能になりました
子宮頸がんを予防するワクチンということから、HPVワクチンは女性が接種するもの、といったイメージがあるかもしれませんが、2020年12月、日本国内でも、4価ワクチンのガーダシルが男性にも適応となりました。
これは、尖圭コンジローマも予防できる、ということはもちろん、HPVは男性に多い咽頭がんや肛門がん、直腸がん、陰茎がんの原因となることがわかっており、HPVワクチンはその発症を予防することも示されているためです。
また、HPVを性感染症と考えると、女性に移すのは男性であるので、男性にも接種すべきなのです。
過去にコンジローマを発症した人も、ワクチンで予防できるのか?
ワクチンは感染を予防するものです。では、過去に尖圭コンジローマになってしまった人は、HPVにすでに感染してしまっているので、将来の尖圭コンジローマはワクチンでは予防できないのでしょうか?
実は、過去に尖圭コンジローマになった人でも、ワクチンを打つことで将来のコンジローマを予防することができる可能性があります。
4価HPVワクチンの16-26才女性を対象にした3つの世界数十か国を調査した大規模臨床試験を統合して解析したデータでは、既感染者と有病者などを含む一般集団(intention-to-treat: ITT群)では、予防効果としては子宮頸部疾患で約50%、外陰、腟疾患で70-80%と低下して、有意差を持って患者数が減少することが証明されているのです。
特に外陰、腟疾患、尖圭コンジローマではITT群としては高い予防効果が示されていました。
4価HPVワクチンによるHPV6/11/16/18に起因する疾患予防効果
ただし、一度感染してしまったHPVの型は完全には予防することができません。HPVワクチンはあくまで「感染」を予防するワクチンのため、すでに感染している型のコンジローマの再発は予防できないとの知見もあります。過去にコンジローマに感染し、治療したことがある人に対してのHPVワクチン接種は、一般的には推奨されていないので、接種希望の人は医師と相談してください。
副作用は大丈夫なの?
HPVワクチンについては、過去に「重篤な副作用があった」との報道があったために、日本国内の若年女性に対する定期接種の積極的勧奨が差し控えられていたことをご存じの方も多いと思います。
その後の追加の調査と、多くの人に接種した世界の報告では、HPVワクチンの副作用は、他のワクチンの副作用と大きな差はないことがわかっています。
副作用としては、接種部位の腫れや痛みなどがありますが、軽度のものがほとんどです。重度の副作用(ギランバレー症候群やアナフィラキシーなど)は100万人に1人以下しか起きないことが知られており、安全なワクチンと考えてよいと思われます。
コンジローマが不安な方は、ワクチンを打ってみませんか?
尖圭コンジローマは、なかなか厄介な病気ですが、ワクチンで予防することができます。
当クリニックでは、HPVワクチンの他、B型肝炎ワクチン・A型肝炎ワクチンを取り扱っています。普段のコンドームでの予防に加えて、予めワクチンを打っておくのも一つの方法です。