腟内射精障害について
私が解説します
小堀 善友
男性の性の健康に関する診療を担当。
■泌尿器科医 ■生殖医療専門医 ■性機能学会専門医 ■性科学会セックスセラピスト
腟内射精障害とは
マスターベーションでは射精が可能であるにもかかわらず、性行為時に射精ができない状態のことを言います。 近年増加傾向であり、厚生労働省の調査では、男性不妊症の原因の7%を超えることがわかっています 。
射精障害の原因
腟内射精障害の原因の過半数は「思春期からの不適切なマスターベーション」です。 また、それ以外にもパートナーとの関係性の問題や、アダルトビデオを見ながらでないと射精できないといった性癖の問題、その他心因性などの要因もあります。
不適切なマスターベーション
大きく、以下の3つに分類できます。
- 床オナ
- 強グリップ
- 足ピン
床オナ(非用手的マスターベーション)
床にペニスを押しつけるなど、手を使わないでマスターベーションをすることを指します。 多くの場合、勃起さえしないまま射精していることもあります。 床以外にも、枕などを陰部に挟み込む、ペニスを大腿に挟み込むなどの刺激方法があります。
強グリップ
手を使ってマスターベーションを行うのですが、その刺激が強すぎてしまう場合です。 強く握りすぎてしまったり、物凄い速さで手を動かしたりするなど、ペニスに与える刺激が実際の性行為の時よりも強い場合が多いです。
足ピン
仰向けで足を伸ばしていないと射精できないなど、ある特定の体勢でないと射精ができない状態です。 性行為の時に行うように、自分で腰を動かしたりすることで射精をすることができません。
上記のように、多くは「マスターベーションの方法が腟の中の刺激とは異なる」状態が多いです。 また、普段から刺激が強いマスターベーションを行なっている場合が多いため、「腟の中にペニスを挿入しても何も感じない、気持ちよくない」と感じてしまいます。
心因性の腟内射精障害
腟内射精障害の原因の過半数は不適切なマスターベーションですが、それ以外の原因として心理的なものや、原因がよくわからないこともあります。 心理的なものとしては、以下のように様々な状況が考えられます。
- 厳格な家庭に育ち、性行為が悪いものと教えられた
- 腟内射精をすることや、子供を作ることへの恐怖感
- AVを見ながらでないと射精できない(特殊な性癖がある、もしくは自分自身が性行為に参加していると射精できない、ということも)
- 1人でないと射精できない
- 妻から「セックスが下手」と言われてから射精できなくなった
- 単純に、セックスの時にどのように動いたら良いかわからない
上記のように、様々なきっかけで射精ができなくなってしまうことがあります。
治療をする際には、それぞれの事情を伺いながら、カウンセリングや射精のリハビリを進めていきます。 上手に射精をしていくためには、コツを掴むことが重要です。心因性の場合は、すぐに改善することは少なく、パートナーと一緒にじっくり治療を進めていく必要があります。
腟内射精障害の治療
射精リハビリテーション
マスターベーション方法を修正し、適切な刺激で射精できるように訓練していきます。
具体的には、以下の方法を勧めています。
- リラックスした姿勢で
- できるだけ手に力を加えずに
- スラスト運動(手を上下に動かす方法)で射精に導く
セックスカウンセリング
性行為は一人で行うものではありません。パートナーの協力があってできるものです。
パートナーと一緒に、カウンセリングを受けられることをお勧めしています。まずは、射精障害というものが一般的な病気であり、治療を受けることで症状が改善する可能性があることをご理解いただきます。
パートナーの方の協力がないと、絶対に射精障害は改善しません。
また、パートナーの方からすると、「なんで私の中で射精してくれないんだろう?」と傷ついている人も数多くいます。
お互いに、状況を理解し合うことが重要なのです。
(当クリニックでの治療費用 初診料:2,750円、セックスカウンセリング料:11,000円(税込))
当クリニックでの射精障害治療について薬物治療
勃起障害(ED)も絡んでいる場合はPDE5阻害薬が効果的です。また、射精や勃起を補助してくれる漢方薬もあるため、それを併せて使用していきます。
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治療が困難な場合
勃起障害の治療は、PDE5阻害薬が非常に有効であるため、若年者であれば80%以上の人に効果が認められます。 しかし、射精障害は特効薬があるわけではなく、治療もリハビリやカウンセリングが必要となってくるため時間が長くかかり、治療が困難な場合も少なくありません。
もしも、お子様を希望されるカップルであるならば、シリンジ法(マスターベーションで採取した精液を採取し、注射器を用いて自分で腟内へ注入する)もしくは人工授精や生殖補助医療を併用しながら治療を進めていきます。
また、性行為は「射精」が全てというわけではありません。お互いの体を触ったり、抱きしめ合うだけでも満足感が得られます。 パートナーと一緒に、幸せな性の形を探っていくことも、カウンセリングの役割となります。