男性不妊・メンズヘルス

精巣形成不全症候群についてせいそうけいせいふぜんしょうこうぐん

私が解説します

小堀 善友

小堀 善友
男性の性の健康に関する診療を担当。
■泌尿器科医 ■生殖医療専門医 ■性機能学会専門医 ■性科学会セックスセラピスト

精巣形成不全症候群とは

精巣形成不全症候群(Testicular dysgenesis syndrome)とは、精巣の機能が悪化し、男性ホルモンの分泌が不十分となることで起こる様々な病気のことです。

胎生期(赤ちゃんが生まれる前の、お母さんのお腹の中にいる状態)の時に、精巣の中にある細胞が十分に形成されないために、男性ホルモンが十分に分泌されず、このような病気を引き起こします。

「精巣形成不全症候群」は、コペンハーゲン大学のスカケベック教授が提唱した概念であり、近年急激に増加傾向であることがわかっています。その原因は、遺伝的要因や環境、ライフスタイルの変化が影響しています。

精巣形成不全症候群には、以下の4つの病気があり、それぞれが関連していると考えられています。

1)停留精巣:
生まれた時に、精巣が陰嚢内に降りてこないで、腹部に止まっている状態。精巣を陰嚢内に固定する手術が必要。
2)尿道下裂:
尿の出口である尿道が、ペニスの先端ではなく中間や根本に出てきてしまっている状態。
3)精巣がん:
精巣にできる悪性腫瘍。普通の癌は高齢者に多くできますが、精巣がんは胎児の精巣形成障害が原因となるため、若年者に多く発生します。
4)男性不妊症:
精巣内で十分に精子を作り出すことができず、射精液内の精子濃度や運動率が低下してしまう状態。

つまり、停留精巣の手術を小児期に受けた男性は、将来的に男性不妊症になってしまうリスクをそもそも持っているということになります。
生まれついての状態であり、根本的な治療を行うことは困難です。そのため、上記の疾患が絡んでいる男性不妊症に対しては、パートナーの女性と一緒に積極的な生殖補助医療をお勧めいたします。