男性不妊・メンズヘルス

特発性造精機能障害とは

私が解説します

小堀 善友

小堀 善友
男性の性の健康に関する診療を担当。
■泌尿器科医 ■生殖医療専門医 ■性機能学会専門医 ■性科学会セックスセラピスト

特発性造精機能障害とは

精子の数が少なくなり、動きが悪くなる状態のことを「造精機能障害」といいます。
造精機能障害の半数以上は原因不明であり、この原因不明の造精機能障害のことを「特発性造精機能障害」といいます。

特発性造精機能障害の対策と治療

原因不明であったとしても、ちゃんと根拠のある治療もあります。対策と治療 について解説していきます 。

そもそも、加齢によって造精機能は低下する

35歳を過ぎると、精液の量、精子濃度、運動率が低下してくることが明らかになっています。 女性は加齢により卵巣の能力が低下することが知られていますが、男性も加齢により「精子力」が低下するのです。 そのため、根本的には若いうちに子供を作っておくに越したことはありません。

加齢のストレスを下げる生活習慣が重要

晩婚化が進んでいる世の中、すべての人が若いうちに子供を作ることができるわけではありません。 加齢のストレスは、日々の生活の中に潜んでいます。 加齢のストレスを下げる生活習慣を心がけることにより、精子の能力が改善することが知られています。

1日7時間の睡眠を取りましょう

7時間睡眠

睡眠不足は、精子の濃度、数、運動性、形状、睾丸の大きさに悪影響を与えるという報告があります。1)十分かつ良好な睡眠を取ることは、精子にとって良いことがわかっています。

健康的な食生活を心がけましょう

オメガ3脂肪酸

肉や乳製品などに多く含まれている飽和脂肪酸の取り過ぎは、精子の濃度に悪影響を与えてしまいますが、不飽和脂肪酸であるオメガ3脂肪酸は、精子の形状に好影響を与えるという報告があります。2) 具体的には、シーフード、鶏肉、ナッツ、全粒の穀物、果物と野菜は精子の質に良い影響を与えます。

太っている人はダイエットをしましょう

肥満の男性の精子は、数、濃度、運動性、速度が低く、精子奇形が多いことがわかっています。逆に、ダイエットをすると、精子の質が改善することも知られています。3)

適度の運動を心がけましょう

ダイエットにも関わってきますが、運動不足は精子の質を悪化させます。 逆に、海外の研究によると、適度の運動をすることにより精子の濃度や運動率を改善させるというデータがあります。4) 運動は、ジョギングのような軽いものから、ウエイトリフティングのようなハードのものまでなんでも良いようです。 ただし、自転車だけは例外で、精巣への血流現象と物理的ダメージにより精子所見を悪化させる可能性があるそうです。5) 注意しましょう。

精神的ストレスを避けるようにしましょう

ストレスに注意

仕事のストレスは、精子の濃度と運動率を下げるのみならず、不妊やセックスレス、他の病気への影響も与えるという研究があります。6)
また、ストレスが精子のDNAへ影響を与えることが知られています。できる限り、リラックスできるような生活を心がけましょう。

タバコを吸っている人は禁煙しましょう

タバコは精子の質を悪化

タバコは体へ老化のストレス(酸化ストレス)をかける最たるものです。 長い目で見ると、タバコは癌や心臓病の原因となることは有名ですが、短い目で見ると精子の質を悪化させてしまいます。7) 赤ちゃんを希望している人は、絶対にタバコをやめて、禁煙をすることをお勧めします。

上記に書かれていることは、決して難しくも珍しいことでもなく、一般的に「健康に良いですよ」と言われるライフスタイルを示しています。極端なことは言いませんので、常識的な感覚で体にいい生活習慣を心がけることが重要なのです。

老化のストレス(酸化ストレス)を下げる抗酸化のサプリメントは効果的

加齢による老化のストレスは、精子の質を下げてしまいます。 逆に、酸化ストレスを下げるような抗酸化のサプリメントは、精子の所見(濃度や運動率)を改善することが知られています。8) また、パートナーの妊娠率まで上昇させる可能性があると報告があります。 具体的に、以下のサプリメントは、精子所見(総精子数、精子濃度、精子運動率)を改善します。

上記だけでなく、抗酸化と言われているサプリメントは精子所見を改善させる可能性があります。 例えば、アスタキサンチンやピクノジェノール、ポリフェノールといったものは抗酸化作用があり、精子の所見を改善させたという報告があります。9) また、漢方薬にも抗酸化作用があることが実験的に証明されており10)、男性不妊症に効果のある漢方薬もあります。

原因不明の造精機能障害は、男性不妊症の中で最も多く、確実にパートナーの妊娠を保証するような特効薬や手術があるわけではありません。 また、生活習慣の改善や、老化のストレスを下げる抗酸化のサプリメントが効果的ですが、効果は限定的で必ずしも妊娠につながらない可能性もあります。 長期間パートナーが妊娠できていない場合は、できるだけ早く専門医を受診して、積極的な不妊治療を受けることが必要です。 なぜなら、いつまでも待っていると、それだけで時間が経ってしまい、歳をとってしまうからです。

早期の不妊治療専門医の受診を検討し、パートナーと一緒に治療を進めていきましょう。生殖補助医療を介入させることも重要です。

男性不妊症に効果的な漢方薬について

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

虚証の人に対して有効。精子運動率の上昇が期待できます。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

実証の人に対して有効。実験上では全身の酸化ストレスを低下させることが判明しており、精子濃度と運動率の改善が期待できます。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

中間証の人に対して有効。

それぞれの漢方薬の世界的な大きなエビデンスは存在しません。 しかし、男性不妊症に効果的であるという日本国内での報告は多く11)、標準療法の補助的治療法として積極的にお勧めして良いと考えられます。

1) Association of sleep disturbances with reduced semen quality: a cross-sectional study among 953 healthy young Danish men. Am J Epidemiol. 2013 May 15;177(10):1027-37.

2) Dietary fat and semen quality among men attending a fertility clinic”, Human Reproduction, Vol. 27, No. 5, pp.1466-1474 (2012), Jill A. Attaman

3) Impact of obesity on male fertility, sperm function and molecular composition. Spermatogenesis. 2012 Oct 1;2(4):253-263.

4) Physically Active Men Show Better Semen Parameters than Their Sedentary Counterparts”, International Journal of Fertility and Sterility, Vol. 11, No. 3, Oct-Dec 2017, pp. 156-165

5) Semen profiles of young men involved as bicycle taxi cyclists in Mangochi District, Malawi: A case-control study. Malawi Med J. 2015 Dec;27(4):151-3.

6) The effect of stress on the semen quality”, Jurewicz J, Med Pr. 2010;61(6):607-13.

7) Lifestyle and semen quality: role of modifiable risk factors”, Joanna Jurewicz, Systems Biology in Reproductive Medicine, Volume 60, 2014 – Issue 1.

8) Antioxidant cosupplementation therapy with vitamin C, vitamin E, and coenzyme Q10 in patients with oligoasthenozoospermia. Arch Ital Urol Androl. 2014 Mar 28;86(1):1-4.

9) Improvement of seminal quality and sexual function of men with oligoasthenoteratozoospermia syndrome following supplementation with L-arginine and Pycnogenol®. Arch Ital Urol Androl. 2015 Sep 30;87(3):190-3. doi: 10.4081/aiua.2015.3.190.

10) Combination therapy with antioxidants improves total motile sperm counts: A Preliminary Study. Reprod Med Biol. 2019 Nov 28;19(1):89-94.

11) Clinical efficacy of Japanese traditional herbal medicine (Kampo) in patients with late-onset hypogonadism. Aging Male. 2010 Sep;13(3):166-73.