早漏・遅漏というと、比較的よく知られた言葉ですが、具体的にどういう状態のことを指すのか、ご存じでしょうか。
射精するのが早い・遅いというシンプルなことと認識されている方がほとんどだと思います。しかし実は、射精に関して言えば、「早い」と「遅い」は対義語ではありません。早漏と遅漏は反対の状態というわけではなく、全く違う病態なのです。

早漏は脳の病気

早漏は脳の病気

早漏とは、一言でいうと「挿入して1分以内に射精してしまう状態」のことです。(詳しくは:早漏の定義

個人的な見解ですが、早漏は脳の病気と考えています。早漏の原因は、脳内のセロトニンというホルモンが関与しており、治療にもセロトニンをコントロールする薬が使用されることがあります。

日本ではまだまだ、早漏を「治療する」ということに馴染みがないかもしれませんが、海外ではれっきとした性機能障害の問題として捉えられており、射精障害についての医学的研究の実に90%は早漏に関することなのです。

早漏の治療について

前述のように、射精は脳内のセロトニンが関与しています。そのため、セロトニンの分泌をコントロールする薬で早漏を治療することができます。海外では早漏治療のための専用の薬があるのですが、日本では適応になっていません。そのため、適応外使用となりますが、科学的根拠がある同様の作用をするうつ病の薬で治療を行われることがあります。

早漏の診療について >

遅漏は「性」活習慣病

遅漏は「性」活習慣病

遅漏とは、性交時に射精に至るまでの時間が本人の意思に反して過度に遅れることを指しますが、実際の臨床現場で問題になるのは、マスターベーションでは射精することはできるのにもかかわらず、腟の中で射精することができない「腟内射精障害」です。腟内射精障害は重度の遅漏の状態と考えられ、日本国内の男性不妊症原因の7.4%であることがわかっています。

これも個人的な見解ですが、遅漏は性の生活習慣病、つまり「性」活習慣病であると考えています。

なぜかというと、遅漏(特に腟内射精障害)の原因の半数以上が、「不適切なマスターベーション」であることが判明しているからです。
普段の「性」活習慣であるマスターベーションが不適切、つまり腟内の刺激とはかけ離れた方法であるために、性行為の際にうまく射精することができないのです。

遅漏の原因(不適切なマスターベーションとは)

不適切なマスターベーションとは、簡単にいうと、腟の中とは異なる過度な刺激を与える方法のことです。過度な刺激に慣れてしまうと、いざ性行為の際に射精できなくなってしまいます。
具体的な方法としては、以下の3つにまとめられます。

  1. 床オナ
    手を使わないマスターベーション
  2. 強グリップ
    強く掴む、もしくは早く動かしすぎる
  3. 足ピン
    足を伸ばしていないと射精できないなど、特定の姿勢でないと射精しづらい

遅漏の治療について

治療をしていくためには、適切な方法で射精できるように射精のリハビリをしていく必要があります。
また、パートナーの理解が非常に重要となってきます。パートナーの協力なくして、射精障害の治療をしていくことはできません。そのため、カウンセリングも含めて、カップルの望んでいる方向を目指して、治療を進めていきます。

射精障害の治療について >

一口に早漏・遅漏といっても、病態も違えば、治療のアプローチも違ってきます。早漏や遅漏でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

参考文献

国際性機能学会 ガイドライン https://professionals.issm.info/resources/clinical-guidelines/

厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業. 我が国における男性不妊検査 治療に関する調査研究 http://www.j-andrology.org/news/web2017118.pdf

小堀善友、青木裕章、西尾浩二郎、佐藤 両、芦沢好夫、八木 宏、宋 成浩、新井 学、岡田 弘: 射精障害患者に対するマスターベーションエイドを用いた射精リハビリテーション. 日本泌尿器科学会雑誌 103: 548-551, 2012 https://doi.org/10.5980/jpnjurol.103.548