早漏って病気なの? ~ 実は患者数が多い疾患
早漏といっても、病気のイメージはないかもしれません。人それぞれ、その時々で、射精までの時間は違うのは当然ですが、性生活に支障をきたす場合は、性機能障害の一種といえます。
「性機能障害」の中でも早漏は、勃起障害(ED)に次いで患者数が多い疾患です。
米国の報告では、18歳から59歳までの男性の21%が早漏であると報告されています1)。また、日本国内の一般人への調査では、約40%近くの男性が、自分が早漏であると感じていることがわかっています2)。
また、「射精障害」というワードで世界の研究論文をPubMed(※)検索してみると、4,600件ヒットするのですが、そのうち2,000件(43.5%)が早漏の研究であり、射精障害の中でも多くを占めることが分かります。
※PubMed(パブメド):世界の主要な医学系雑誌に掲載された文献を検索できるデータベース
このように、早漏は世界的にも広く研究されており、国際的なガイドラインでも、しっかりと定義や治療法について示されている疾患なのです。
早漏の定義についてはいくつかあるのですが、国際性機能学会のガイドラインでは「挿入後に1分以内に射精してしまうこと」、または「男女がともに満足できる時間まで挿入時間をコントロールできないこと」、とされています3)。
重要なのは、早漏が原因となって、性生活を避けようとし、人間関係や日常生活、心理状態まで支障をきたす可能性があることです。
早漏の治療方法とは
日本国内では、厚生労働省の承認を受けた早漏の治療薬が無いため、早漏を治療できることはあまり知られていません。しかし、治療法はありますのでご安心ください。
国際性機能学会・米国・欧州のガイドラインでは、下記の治療法が示されています。
- 薬物療法(お薬の服用)
- 行動療法
- 精神的治療(カウンセリングなど)
代表的な治療は薬物療法であり、国際性機能学会のガイドラインにも一番に記載されています3)。
薬物療法が勧められるのは、単純にとても効果的で、使用方法が簡単であるからです。
薬物療法と比較すると、他の治療方法は難しい場合が多いです。
例えば、行動療法としてストップ&スタート法(マスターベーションの際に寸止めを繰り返す練習)がありますが、重症の早漏患者ではマスターベーションの時でさえ射精が我慢できない場合があります。
また、早漏に対する精神的治療も実際に行うことができる施設は日本国内にはないと思われます。
オススメできる治療は
日本国内においても、おすすめできる治療法は、やはり「薬物療法」です。
早漏の治療には、神経伝達物質である「セロトニン」の分泌をコントロールするお薬を使います。
セロトニンは「抑制系」の神経伝達物質ですので、脳内の「射精をする」という命令を抑制して、射精を我慢することができるようになります。そのため、セロトニンが不足してしまうと、射精を我慢することができなくなり、期待するよりも短い時間で射精してしまうのです。
世界で早漏の治療薬として唯一認可されている「ダポキセチン」というお薬は、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」といって、脳内のセロトニンの働きを増強させるお薬です。
50か国以上で認可されており、早漏の治療薬としては第一選択薬と考えられます。
しかし、日本国内では認可されていません。おそらく、日本人はセックスの回数が少ないために、早漏の薬を使用する人が少ないと考えられて、製薬会社が積極的に認可の申請をしなかったためと考えられます。
また、うつ病の治療薬であるパロキセチンも、早漏の治療薬としてガイドラインに記載されています。
うつ病も、脳内のセロトニンが不足することが原因となって起こります。そのため、うつ病の治療にはSSRIが使われています。
本来はうつ病治療に使われる薬を、その副反応を用いることにより、早漏の治療を行うことができるという訳です。
それぞれの薬を使用することにより、射精までの時間が約3倍以上伸びることがわかっています3)。
早漏治療でこれはオススメしません!
早漏治療の一つとして、包茎手術を勧めているサイトも見かけますが、私はオススメしません。理由を以下に記します。
包茎術後にトラブルが多い
私自身も何人も対応したことがありますが、包茎手術を受けた後に、逆に包皮が狭くなってむけなくなってしまったり、亀頭増大処置をされた後に感染を起こして痛みがとれなくなってしまったりなどの、トラブルを抱えている人をお見掛けいたします。
また、国民生活センターのページを見ていただくと多くの事例が示されていますが、「包茎手術が7万円でできると思ったが、不安をあおられてオプションを付加され、合計100万円を超える手術費がかかってしまった」といったトラブルも報告されています5)。
私が診察した患者は、ベッドの上に寝かされて、下半身を裸にされて、まな板の鯉状態となっているときに、断れないオプションをどんどん付加されて、包茎手術に100万円かかってしまったと言っていました。
図 男性の美容医療サービスに関する契約当事者年代別相談件数(n=2,055※無回答を除く)
不可逆的に射精障害になってしまう可能性がある
包茎術後に、性感帯が切除されてしまうことにより、逆に射精障害となってしまう事例があります。これは、手術をした後には絶対に治すことができません。
早漏の治療にも、様々な治療がありますが、包茎手術は早漏の治療としてはガイドラインにも勧められていません。絶対に受けないようにしましょう。
参考文献
1)米国泌尿器科学会 早漏ガイドライン
2)テンガヘルスケア社 オナニー国勢調査
3)国際性機能学会 早漏ガイドライン
4)欧州泌尿器科学会 早漏ガイドライン
5)国民生活センター 包茎手術、薄毛治療など、男性の美容医療トラブルに注意! 受診はインターネット検索で公的機関の注意喚起情報を調べてから