
HPVワクチンについて、こんなギモンはありませんか?
- 定期接種のタイミングを逃してしまった。今からでも打った方がいいの?
- 性交渉の経験もあるし、今さらHPVワクチンを打っても子宮頸がんの予防効果はないよね?
- パートナーが尖圭(せんけい)コンジローマだった。今からでもHPVワクチンで予防できる?
今回は、これらのギモンにお答えします。
HPVワクチンの予防接種を逃した女性の方、まだ遅くありません。
16歳を過ぎてもHPVワクチン接種は、効果が期待できます。すでに性交渉の経験があっても接種が早ければ早いほど子宮頸がんと尖圭コンジローマの予防効果は高くなります。
接種のタイミングと年齢別の効果
10~14歳:
HPVワクチンの予防効果は、性交未経験の10~14歳での接種が最も高い予防効果があります。
15~26歳:
定期接種の期間を過ぎた15~26歳でも、HPVワクチンの接種は推奨されています。性交渉の経験があっても、すべてのHPV型に感染しているわけではありません。未感染のHPV型による子宮頸がんや尖圭コンジローマに対して予防効果が期待できます。
27~45歳:
さらに、性交渉の経験があっても45歳までであれば、若い年代より効果は弱くなりますが、一定の予防効果があります。HPVワクチンは、子宮頸がんの前がん病変、すでに感染したHPV型や尖圭コンジローマに対して治療効果はありませんが、まだ感染していないHPVに対する予防効果が期待できます。
子宮頸がんってどんな病気?
子宮の入口(子宮頸部)にできる悪性腫瘍です。日本では毎年約1万人が発症し、約2,800人が亡くなっています。また、患者数・死亡者数ともに増加しており、特に20〜30代の若い世代での増加が問題となっています。
子宮頸がんは、早期がんであれば子宮の入口のみを切除することで治療できる場合があります。しかし、がんが進行して子宮をすべて取り除くことになると妊娠できなくなります。
子宮頸がんの95%以上は、性的接触によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因です。
HPVのタイプ(型)って何?
世の中には200種類以上のHPVが存在し、それぞれに背番号(型・タイプ)がつけられ、型によって引き起こす病気が異なります。
子宮頸がんの原因となる高リスク型HPVは約13種類あり「HPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68型」になります。特にHPV16、18型は、子宮頸がんだけでなく、腟がん、外陰がん、咽頭がん、肛門がんの発症に強く関与しています。また、HPV6・11型は、がんになることはありませんが、陰部にイボ(尖圭コンジローマ)をつくります。
新しいHPVワクチン、「シルガード9」って?子宮頸がん予防効果は?

これまでのHPVワクチン(2価・4価)はHPV16・18に対する予防効果があります。しかし、シルガード9(9価)は、HPV16・18に加え31・33・45・52・58に対しても予防効果があります。シルガード9は子宮頸がんの原因となる主なHPV型をカバーするため、90%あるいはそれ以上の子宮頸がんの予防が可能とされています。
子宮頸がんワクチンの注意点として、すでに感染したHPV型に対する治療的効果がありません。この点についてシルガード9は、予防効果のあるHPV型が多いため、性交渉の経験がある方でも従来のワクチン(2価・4価)と比較してより高い予防効果が期待できます。
尖圭コンジローマってどんな病気?
尖圭コンジローマは、性行為により感染するヒトパピローマウイルス(主にHPV6・11型)が陰部に「イボ」をつくる病気です。尖圭コンジローマは、一度感染すると治療しても再発を繰り返すことがあります。また、出産時にイボが腟の中にあると赤ちゃんに感染する可能性がまれにあります。
シルガード9は、これまでHPV6・11型に感染していなければ、性交渉の経験があっても尖圭コンジローマの予防が期待できます。特に、これまで尖圭コンジローマにかかったことがなく、パートナーに既往がある方に接種をおすすめします。
子宮頸がんワクチン「シルガード9」の副反応(副作用)は?
シルガード9は、世界中で広く使われている安全性の高いワクチンです。副反応として多いのは接種部位の痛み、頭痛や発熱ですが、いずれも一時的で自然におさまることがほとんどです。もちろん、鎮痛薬や解熱薬で症状をおさえることができます。
接種後にまれに起きる“ふらつき”や“失神”は、ワクチンそのものではなく、多くは迷走神経反射と考えられています。また、世界保健機関(WHO)も、この反応は、誰にでも起こりうる予防接種後の「ストレス反応」と説明しており、HPVワクチンの接種を推奨しています。
当クリニックでは、接種後に院内で座って休んでもらい、30分ほど様子を見ることで転倒などのリスクをしっかり防いでいます。接種部位は清潔に保ち、激しい運動を避ければ特別な注意は必要ありません。
もし体調に変化があれば、遠慮なく医師、スタッフに相談してください。
シルガード9は、将来の病気を大きく減らすための大切なワクチンです。安心して接種を受けていただけます。
終わりに
- 45歳までであれば、性交渉の経験があってもHPVワクチンの接種によって子宮頸がんの予防が期待できます。
- HPVワクチンは、子宮頸がんだけでなく、腟がん、外陰がん、咽頭がん、肛門がんに対しても予防効果があります。
- 尖圭コンジローマは、がん化することはありませんが、一度感染すると再発を繰り返すことがあります。また、妊娠中に発症するとまれに赤ちゃんに感染する可能性があります。これまで尖圭コンジローマにかかったことがなければ、HPVワクチンの接種が推奨されます。
- 性交渉の経験が少ないほど、ワクチンの予防効果は高くなります。迷っている方は、なるべく早めの接種をおすすめします。
当クリニックでは性別に関係なく成人のHPVワクチン接種にも対応しています。
接種時期や他のSTD予防ワクチンについても個別にご相談いただけますので、お気軽にご相談ください。
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