若い女性からクラミジア感染症について相談がありましたので、ご紹介いたします。
【質問】
私は20代の女性・未婚です。クラミジアについて教えてください。
『先日、子宮頸癌検診に行きましたら、クラミジアがみつかり治療をしました。でも彼に検査してもらった結果は陰性でした。これは、どうしてでしょう?セックス以外で感染するのでしょうか?』
【Dr.尾上の回答】
検査結果が矛盾していて、これは悩みますね。どうしてでしょう!一緒に考えましょう!
こういうケースは決して珍しくはありません。
クラミジアは性感染症ですからセックス、あるいはそれに類似する行為以外の感染経路で移ることはありません。
しかし、実際には女性の検査結果が陽性にもかかわらず、男性パートナーの結果が陰性ということはしばしばあります。
その理由として次の6パターンを考えてみました。
【1】実際には男性パートナー(彼)も感染しているのに検査で陰性になった(偽陰性)
これには幾つかの理由が考えられます。まず検体の取り方から考えましょう。
男性の尿検査(クラミジアの遺伝子検査:核酸増幅法)は、2時間以上排尿しない初尿の約20ccの検体で行います。
この採尿方法で採取した尿検体が検査には最も適しているとされています。
尿道を通ってくる尿が、前部尿道に付着している病原微生物を洗い流してきます。ですから最初の尿(初尿)を採取することが大切です。
尿量が多くなると病原微生物も希釈され検出率が低下することが考えられます。
ただ、現在では遺伝子レベルの検査ですから、感度が非常に良くなり、こうした採取方法でも遜色なく検出できます。
しかし、比較するとやや5%ほど検出率が落ちると考えられています。
これが陰性になった原因(の一つ)かもしれません。
【2】男性パートナーの検査が迅速検査だった
男性パートナーが受けたクラミジアの検査がもし、迅速検査であれば、検査精度(陽性率)がやや落ちます。それで、陰性と出たのかもしれません。
ただ、迅速検査にもメリットがあります。
陽性と出れば、早期に診断でき、直ちに治療も開始できるからです。
また、その検査の時に、同時に遺伝子検査も受けておけば、2~3日後にかなり正しい結果が得られたでしょう。
【3】貴女の感染源は元彼だった
また、貴女の元彼からクラミジアを移されていたことも考えられます。
貴女が感染していたとしても、女性は症状が、はっきり出る人が少ない(約20~30%)ため気付かないまま、元彼と別れて、今の男性パートナーと付き合い始めたことも考えられます。
もしそうであれば、貴女が現在の男性パートナーにクラミジアを移した可能性もあります。
もう一つの考え方としては、クラミジアの感染率が約30%だとしたら、幸いなことに、貴女のクラミジアが現在の男性パートナーに移っていなかったのかもしれません。
であれば彼の検査結果が陰性でも何の不思議もありません。
でも二人の間でかなりの頻度で性交渉があれば考え難いとも言えます。
【4】ふたりとも感染していたが、男性パートナーだけたまたま治った
さらに貴女も男性パートナーも二人共、感染していても症状がでないため放置していたところ、男性パートナーが、何か他の病気で飲んだ抗生物質でクラミジアが、たまたま治ってしまった、ということも考えられます。であれば、検査は陰性になりますね。
【5】ふたりとも感染していたが、男性パートナーだけ治療した
男性がクラミジアに感染した場合、約50%の人に尿道に症状がでます。
尿道に違和感、不快感、痒み、軽い排尿痛などを認めるため、男性パートナーは、その症状に気がついて泌尿器科を受診し、クラミジアの治療をし、貴女には内緒にしていたのかもしれません。
その後、貴女から言われて別の泌尿器科を受診し、クラミジア陰性の結果を得たのかもしれません。
【6】男性パートナーは、性器ではなく咽頭に感染していた
また彼のクラミジアがクラミジア性咽頭炎であれば咽頭症状はほとんどないし、尿検査では分かりません。尿検査では陰性になってしまいます。
そうであれば、オーラルセックスで貴女の性器にクラミジアが感染し、貴女がクラミジア性子宮頸管炎になっていたのかもしれません。
以上、私が考えた陰性になったパターンです。
他のパターンがあるかもしれません。
分かり難ければご連絡ください。
現在のクラミジアの検査は遺伝子検査(核酸増幅法)ですから精度は良いのですが、感染した時期までは分かりません。
性感染症の治療は自分とパートナーが二人同時に治療するのが原則です。
男性パートナーがクラミジアに感染し治療をしてないのであれば必ず治療を受けさせてください。
クラミジアの治療が終わったら、2週間後にクラミジアの治癒確認検査を受け、健康になったことを確認しましょう。
お互いに健康になり健康なセックスをすることを目標としましょう。
お二人の性の健康をお祈りいたします。