日刊スポーツから取材を受け、性感染症について様々なお話をしました。
18日間に渡って掲載していただきましたので、順次ご紹介していきます。

 
 

早期発見、早期治療
性感染症に気をつけろ

「硬性下疳」は熱出ず無痛

感染から3週間の潜伏期を経て、局所に現われた「初期硬結(こうけつ)」は、その後、次第に状態は悪くなる。

東京・西新宿の性感染症専門治療「プライベートケアクリニック東京」名誉院長の尾上泰彦医師はこういう。

「初期硬結が崩れて深く潰瘍化していくのが典型的なパターンです」冠状溝(亀頭と包皮の根元付近)、亀頭などにできた皮膚の硬いふくらみはやがてその中央部から、えぐれたり、びらん(粘膜のただれ)となり、見た目にも皮膚の荒れた様子がわかるようになる。

「初期硬結が潰瘍化したのが硬性下疳(げかん)です。痛そうですが、痛くはない。熱も出ません」(尾上医師)。

よく見ると、潰瘍の周辺が盛り上がり、硬さもある。
ある50代の男性会社員は、この硬性下疳の段階で受診した。
5週間前、ソープランドを利用し、その際に感染したと思われる。

病原体の梅毒トレポネーマは局所から侵入後、リンパの流れに乗ってリンパ節に至ったあと、増殖して腫らす。

「硬性下疳となった後、やや遅れて鼠径(そけい)部のリンパ節が腫れてきます。無痛性で硬いことが特徴です。大きさは指の頭ほど」(尾上医師)。

炎症はなく「無痛オウゲン」と呼ばれる。
ある20代風俗嬢は、検査結果が陽性になり受診。
訴えはなかったが調べると、硬性下疳が見つかった。
女性器では大小陰唇にできやすい。尾上医師はこう指摘する。

「外陰部を目でしっかり診察することがないと見逃されてしまう。(奥にある)子宮頸部(けいぶ)にもできるので要注意です」。
経験豊富な専門医だからこそ隠れている病変に気づくという。

(日刊スポーツより許可を得て掲載)