みなさんはHPVワクチンについて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
「子宮頸がんのワクチン」
「若い女の子が打つもの」
そんな印象を持っている方が多いかもしれません。
しかし実は、HPVワクチンは女性だけのものでも、子どもだけのものでもありません。
HPVとはどんなウイルス?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、主に性交渉で感染するウイルスです。とてもありふれたウイルスで、性的に活動のある人の多くが一生のうちに一度は感染するといわれています。
多くの場合は自然に体からいなくなりますが、一部の型は
- 子宮頸がん
- 肛門がん
- 中咽頭がん(のどのがん)
- 陰茎がん
- 尖圭コンジローマ(性器のイボ)
の原因になります。
日本での子宮頸がんの現状(女性にとっての問題)
日本では毎年、約1万人の女性が子宮頸がんと診断され、約3,000人が亡くなっています。
特に問題なのは、20〜40代の若い世代でも発症するがんであることです。
働き盛り、子育て世代の女性が命を落とすケースも少なくありません。
HPVワクチンは、この子宮頸がんの原因となるウイルス感染を防ぐことができます。
「もう大人だから意味がない」は本当?
よくある質問がこちらです。
「もう性交経験があるから意味がないのでは?」
「成人してからでも効果はあるの?」
確かにHPVワクチンは“治療薬”ではありません。すでに感染しているウイルスを消すことはできません。
しかし、ここからが大切なポイントです。
HPV感染の特徴として、多くが一過性で自然消失するという性質があります。
また、HPVにはたくさんの型があり、すべての型に感染している人はほとんどいません。
つまり、大人になっていても、まだ感染していない型を防ぐことはできるのです。
実際に海外では、27〜45歳の女性を対象にした研究で、ワクチンを打った人のほうが
- 尖圭コンジローマ
- 子宮頸部の異常(がんの前段階)
が明らかに少なかったことが報告されています。
「成人でも予防効果がある」という結果が出ています。
男性にも関係のあるワクチンです
HPVワクチンは「子宮頸がんワクチン」と呼ばれることがありますが、男性にも大きく関係しています。
男性では、
- 尖圭コンジローマ
- 肛門がん
- 中咽頭がん
- 陰茎がん
の原因になります。
特に近年、のどのがん(中咽頭がん)は男性で増加傾向にあります。
さらに、男性がワクチンを接種することは、自分自身のコンジローマやがんを予防できるだけでなく、パートナーを守ることにもつながります。
海外ではすでに男性接種が進んでおり、オーストラリアでは男性の約8割以上、アメリカでも6割以上が接種しています。
日本でも9価ワクチンの男性への接種が承認されました
2025年、日本で9価HPVワクチン(シルガード9)の男性への接種が正式に承認されました。
このワクチンは、
- 尖圭コンジローマの主な原因
- 子宮頸がんや肛門がんなどの原因
を含む9種類のHPVを予防します。

これにより、HPVが原因となるがんの約90%を防げるとされています。
日本人男性を対象とした臨床試験でも、9価ワクチン接種により対象となるHPVの感染率が有意に低下したことが示されています。
接種を逃した世代へ
2013年、日本では副反応報道の影響で積極的勧奨が中止されました。その結果、接種率は大きく低下し、多くの世代がワクチンを受けられませんでした。
しかしその後の検証で、
「ワクチンの効果は副反応リスクを大きく上回る」
という結論が国内外で示され、現在は定期接種が再開されています。
接種を逃した世代にとって重要なのは、
“今からでも遅くない”ということです。
費用の問題と将来のリスク
基本的にワクチン接種は自費接種となりますが、このワクチンは決して安くありません。
しかし、将来がんやコンジローマになった場合の治療費や身体的・精神的負担を考えると、予防の価値は大きいといえます。
医療は「治療」より「予防」が重要です。
まとめ:女性も男性も、今からでも
HPVワクチンは、
- 女性だけのワクチンではありません
- 子どもだけのワクチンでもありません
- 成人にも意味があります
日本では毎年1万人が子宮頸がんにかかり、3,000人が亡くなっています。
女性を守るためにも、男性自身を守るためにも、そしてパートナーを守るためにも、HPVワクチンは社会全体で取り組むべき予防策です。
【補足:医学的な裏付けについて】
海外の大規模研究では、過去に性交渉機会のあった27〜45歳の成人女性においてワクチン接種後も長期間にわたり予防効果が続くことが確認されています。また成人男性でも十分な免疫反応が得られることが報告されています。
日本人男性16〜26歳を対象にした研究では、9価HPVワクチンの3回接種により、HPVによる持続感染の発生率を有意に低下させたとことが証明されています。
国際的な公的機関(米CDC)も、26歳までの接種を推奨しつつ、27〜45歳でも医師と相談の上で接種を検討する価値があるとしています。
成人であっても、中年期であっても、接種を逃したからといって、あきらめる必要はありません。
HPVワクチンは、今からでも意味のある選択肢です。
参考文献








