男性不妊・メンズヘルス

男性の性機能障害について

私が解説します

小堀 善友

小堀 善友
男性の性の健康に関する診療を担当。
■泌尿器科医 ■生殖医療専門医 ■性機能学会専門医 ■性科学会セックスセラピスト

男性の性機能障害

男性の性機能障害とは、セックスを完遂することができない状態であることを言います。性機能障害に影響を与える因子を以下に記します。

心と体、それぞれの要因が
複雑に影響しあっていることも

心と体、それぞれの要因

性機能障害は、身体的な要因(器質性)が原因になることも、心理的な要因(心因性)が原因になることもあり、 これらが複雑に組み合わさって起こることもあります。 また、身体的な問題が精神的な問題やストレスにつながることがあり、さらにそれが身体的な問題を悪化させてしまう負の連鎖となることがあります。 また、「ちゃんとセックスをしなくちゃいけない」というプレッシャーが原因となって性機能障害が起こることもあります。

性欲の障害

性欲は個人差が大きく、心理的な要因(不安やストレス)によって減少することがあります。 また、年齢とともに減少する傾向があります。 小児期のトラウマが原因となり、性的な思考を抑圧してしまう考え方が身についてしまっている場合は、生涯にわたる問題となる場合もあります。
薬剤が原因となることもあり、うつ病の薬や、前立腺がんの治療に用いられる薬は男性ホルモンを下げてしまうことにより、性欲を低下させてしまう場合があります。
治療としては、原因が心理的なものである場合はカウンセリングが必要となります。 男性ホルモンが低下している場合は、テストステロンの補充療法の適応となります。

勃起する、またはそれを維持する能力の障害(勃起障害)

勃起障害(ED)とは、セックスを行うのに十分な勃起を維持できないことを指します。勃起障害も加齢とともに増加します。勃起障害は身体的もしくは心理的な要因が原因となって起こり得ます。
身体的な原因として、動脈硬化、糖尿病、前立腺がんの手術、うつ病の薬などが挙げられます。
心理的な要因としては、疲労やストレスなども勃起障害の原因となります。
治療は、PDE5阻害薬という薬剤が有効となります。

射精する能力の障害(射精障害)

射精障害とは、性機能障害の中でも勃起はできるのに射精がうまくできない状態のことを言います。
射精障害にも下記のようにいろいろなものがあります。

腟内射精障害(重度の遅漏):
射精までの時間が遅い、また腟内で射精できない状態
神経性の射精障害・原発性無射精症:
射精自体ができないこと、脊髄損傷などが原因となる
逆行性射精:
射精する際に、膀胱へ精液が逆流してしまうため、精液が出てこない現象
早漏:
腟への挿入前や挿入後に早期に起きてしまう射精

陰茎の形の障害

ペイロニー病

勃起時に陰茎が曲がって痛みを起こしてしまい、セックスができづらくなってしまう状態です。 ペイロニー病では、陰茎内で起きた炎症によって、陰茎の海綿体に硬い瘢痕(はんこん:傷跡)組織ができてしまい、それが原因となって勃起をする時に陰茎が曲がってしまうのです。
ペイロニー病に有効な薬剤は少なく、抗アレルギー薬やステロイド、炎症を抑える漢方薬が用いられます。また、最終手段としては、手術が必要となります。

ペイロニー病の状態

真性包茎、嵌頓(かんとん)包茎

勃起していない時に陰茎に皮がかむっていたとしても、勃起した際に、亀頭部が露出できれば全く問題ありません。 つまり、仮性包茎は病気ではないので手術をする必要はありません。 しかし、包皮に狭いところがあって、亀頭を露出することが全くできない状態(真性包茎)、もしくは、亀頭を露出した時にカリの部分がきつく閉まってしまう状態(嵌頓包茎)の場合は手術が必要となります。

オルガズムに達する能力の障害

オルガズムは、性的興奮の頂点です。オルガズムでは、全身の筋肉の緊張がさらに高まって骨盤筋が収縮し、それに射精が続きます。 多くの場合、射精とオルガズムはほぼ同時に起こりますが、この2つは別の現象です。
セックスの際に、オルガズムのタイミングが遅れたり、全く得られなかったりする状態をオルガズム障害と言います。 原因として、身体的疾患によるものと、うつ病などの精神的な要因ものがあります。 原因も様々ですが治療法も様々であり、原因が明らかとなっている場合はその原因を治療していきます。 また、カウンセリングが有効である場合があります。