薬剤性の男性不妊症
私が解説します
小堀 善友
男性の性の健康に関する診療を担当。
■泌尿器科医 ■生殖医療専門医 ■性機能学会専門医 ■性科学会セックスセラピスト
薬剤性の男性不妊症について
様々な薬剤が原因となり、精子を作る力が低下したり、射精ができづらくなることがあります。男性不妊症に影響を与える薬剤についてご説明します。
抗癌剤
過去に抗癌剤を使われた既往がある男性は、精子の元となる胚細胞が減少してしまうために、造精機能障害が起こります。
AGA(男性型脱毛症)治療薬
フィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)など、AGA(男性型脱毛症)を治療する薬 はホルモンに影響を与えるため、精子の数が減少してしまいます。
前立腺肥大症治療薬
シロドシンなど、排尿状態を改善させるための薬は、逆行性射精やEmission less(精液排出不全)を引き起こすために、精液量が低下してしまいます。
その他
ステロイド、サラゾピリン(潰瘍性大腸炎治療薬)、シメチジン(胃潰瘍治療薬)は男性不妊症を引き起こすことが知られています。これらの薬剤を使用中の方は、薬剤の中止・変更・減量を行わないと、造精機能の改善は認められないかもしれません。
癌治療前の精子凍結保存について
近年、癌に対する治療の発達は目覚ましく、癌は不治の病というわけではなくなってきています。
癌を治療するために使用される抗癌剤や放射線は将来精子となる胚細胞を減らしてしまうために、癌を治療した後は男性不妊症となってしまう可能性があります。
そのため、若い男性に対しては、癌を治療した後に、子供を作るチャンスを残してあげることが必要となります。今後、癌の治療を行う予定である未婚の若い男性は、抗癌剤を使用する前に精子を凍結保存することが勧められています。
また、まだ射精ができないような子供に対しては精巣組織を凍結保存するという方法がありますが、現時点では実験段階であり、ヒトの子供の精巣組織から精子形成に成功した報告はまだありません。