精子バンクご利用案内
精子提供を希望するご夫婦へ
当精子バンクは、2024年12月から提供精子の供給を開始いたしました。当院は人工授精や体外受精を実施いたしませんが、当院から全国の産婦人科への提供精子の供給を目指しています。非匿名の精子提供を通じて、すべての当事者さまをつなぐやさしい仕組みをつくる、という当院の理念にご賛同いただける仲間を全国につくり、皆さまができる限り地元で治療を受けられるような体制をつくることを目標としています。
精子提供を受けて家族をつくることは、多くのご夫婦が思い描いてきた妊娠・出産の形とは大きく異なることでしょう。ご夫婦で必死に学び、議論を重ね、時間をかけてこの選択肢にたどり着いたことと存じます。どんな治療が行われるのか、第三者からの提供を受けることによりどんな気持ちになるのか、子どもは夫と全然似ていない外見になるのか、血のつながらない子どもを愛せるのか、周りからどんな風に見えるのか、子どもや家族にはどう伝えたらいいのか、子どもは自分の出自をどう思うのか・・・。この「普通」と異なる道のりの険しさに圧倒され、不安で押し潰れそうになることもあるでしょう。
当院では、この治療に伴う精神的なご負担を少しでも軽減できるよう、ご夫婦の悲しみや不安に寄り添います。当院の精子提供の仕組みは、たくさんの人々のやさしさからつくられています。皆さまの幸せを願うドナーや医療者の助けを借りながら、精子提供に関わるすべての当事者さまの幸せを一緒に実現していきましょう。
ご利用条件
当院ドナー精子のご利用にあたっては、患者さまに以下の条件をすべて満たしていただく必要がございます。
- 日本で法的に婚姻している男女の夫婦
- 当院の基本理念に賛同し、お子さまの出自を知る権利を大切に考えてくださる方
- 当院のドナーとそのご家族の想いを尊重できる方
- 公認心理師による心理カウンセリングを受診し、治療を実施する産婦人科にて治療の承認が得られること
- 夫婦二人の同意の下で、人工授精の実施または体外受精における受精卵の移植を行うこと
当院からのお願い
非匿名での精子提供について、日本では適切な法整備が行われておらず、社会的な認知も進んでいません。そんな中で、子どもの出自を知る権利を大切に考え、非匿名での精子提供に賛同してくださったドナーやそのご家族に、当院は深く感謝しています。精子提供のプロセスにおいても、たくさんのお時間を割いていただいています。
当院ではすべてのドナーとのつながりを大切に考え、お子さまとの将来的な関わりの可能性を見据えながら、信頼関係の構築に努めています。ドナーのやさしさを皆さまに届けることが私たちの役目です。
患者さまにも、ドナーとそのご家族の想いを尊重し、ドナーからいただいたやさしさをお子さまに届けていただきたいと思っています。
当院から精子提供を受けるまでの流れ
STEP1. 情報提供
参考資料を共有し、メールやZoomでやりとりさせていただきます。
STEP2. 当院不妊カウンセラーによる面談(90-120分、対面またはオンライン)
精子提供の概要、お子さまの出自を知る権利、告知、当精子バンクの仕組みについてご説明します。
STEP3. 外部の心理師による心理カウンセリング(3-5回程度)
ご夫婦が提供精子を使った生殖補助医療を始める準備ができているかどうか、心理師が確認します。
STEP4. 産婦人科での治療可否の決定
カウンセリング報告書の内容を踏まえ、治療を始められるかどうか産婦人科にて決まります。
STEP5. 提供精子の産婦人科への配送/治療開始
ドナーとのマッチングを行い、当院から産婦人科へ提供精子を配送します。
妊娠中・育児中の支援
当院の提供精子により妊娠したご夫婦に対しては、妊娠中・育児中も当院からの支援を継続します。いつでもお気軽にご連絡ください。
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妊娠中(妊娠後期)
当院不妊カウンセラーによる面談
- ドナーの身元非特定情報の開示
- 出産後に生じうる懸念や悩みとその対応
- 当事者LINEグループへの招待
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妊娠中・育児中
オンラインを中心とする勉強会・交流会
- 同じ立場のご夫婦とのつながりづくり、意見交換
- 精子提供に関する話題提供
- 告知の体験談共有(告知イメージの具体化)
追跡調査と結果報告
- 親子関係や告知状況の調査
- お子さまの健康状態やドナーへの関心の有無の調査
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専門家の介入を必要とする場合
外部の精神科医/心理師による支援
- 精子提供の知見を持つ精神科医による医療相談または心理師カウンセリング
- 必要に応じて、お子さまへのカウンセリングも実施(児童心理に詳しい心理師をご紹介)
お子さまへの告知について
当院の提供精子をご利用いただくご夫婦には、生まれたお子さまに対して早期から真実告知(テリング)を行うことを強く推奨します。
当院不妊カウンセラーの伊藤は、精子提供で生まれた自身の子どもたちに、パパには赤ちゃんの卵がなかったがドナーさんに助けてもらって生まれたということ、そして二人が生まれてとても嬉しいよ、ありがとうということを2歳から伝え始めました。子どもたちとオープンな関係を築き、その誕生への感謝を伝えながら過ごす日々は、幸せに満ち溢れています。
当院のドナーは精子提供で生まれるお子さまの出自を知る権利を大切に考え、非匿名での精子提供に賛同してくださった方々です。
非匿名での精子提供には大きな責任が伴いますが、困っているご夫婦とお子さまのために勇気を持ってご決断いただきました。お子さまにドナーの想いをお伝えいただき、愛情いっぱい育てていくことが、ドナーのやさしさに対して責任を果たすことになると当院は考えています。
告知のタイミングや伝え方については、さまざまな“先輩たち”からのアドバイスがあります。一緒に考えていきましょう。
当院の精子ドナーの特徴
当院のドナーは個性豊かです。仕事や学業に熱心に取り組む男性や、育児を頑張るお父さん、不妊治療の経験を持つ人や無精子症の友人がいる人など、その特徴をまとめることは容易ではありませんが、何らかのきっかけで当院の非匿名での精子提供について知り、賛同して下さったという共通点を持ちます。
当院の精子ドナーの属性
年齢: | 登録時22~45歳。平均34歳 |
居住地: | 関東地方89%(うち、東京都60%) |
既婚率: | 26% |
職業: | 会社員、フリーランス、医師、起業家、学生など |
注:2025年1月17日時点で正式にドナー登録を行う男性の特徴
精子提供の動機
精子提供を志願した理由もさまざまですが、以下にて一例を紹介します:
- (AIDという医療行為で)子どもの知る権利が十分に確保されていないことを知り、一人でも多くそのような悩みを持つ子どもが減るよう、当院の理念に共感し、ドナー提供をしようと思いました。
- こちらのクリニックのドナー登録は全員が非匿名ということなので生まれて来た子ども全員が平等にルーツを知ることができて良いと思った。
- 自分にも子どもがいて、子を持つこと、一緒に暮らしていくことの幸せを日々感じています。世の中に子どもが欲しくてもその機会が得られない人たちに少しでも何か力になれることがあれば協力したいと思い、申し込みました。
費用の目安
当院関連の費用
治療検討中 | |
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● 参考資料のご共有 ● 情報提供 (メール・Zoom・対面) |
無料 |
治療決断後 | |
● 治療前面談費用 (コーディネート費用) |
16,500円(税込) 産婦人科での治療承認後にご請求 |
治療承認後 | |
● 情報管理料 (コーディネート費用) |
33,000円(税込) |
提供精子の配送時 | |
● 提供精子管理料 | 1本あたり110,000円(税込) 人工授精用に一度に3本以上をお送りする場合は 1本あたり77,000円(税込) |
● 配送料 | 11,000~33,000円(税込) |
妊娠後 | |
● 治療後面談費用 (コーディネート費用) ● 情報管理料 (コーディネート費用) |
88,000円(税込) |
上記は2025年1月29日現在の金額であり、予告なく変更する可能性がございます。ご了承ください。
非配偶者間の生殖補助医療は保険適用の対象外であるため、自費診療となります。
当院以外でかかる費用
上記の費用以外に、心理カウンセリングや産婦人科での生殖補助医療の費用がかかります。以下に目安となる金額を記載しますが、詳細はカウンセリングを実施する公認心理師の先生や治療を実施する産婦人科に直接お問い合わせください。
● 心理カウンセリング: | 5~10万円(複数回のカウンセリングと報告書の作成にかかる費用) |
● 人工授精: | 1周期あたり5万円~(診察代等を含む) |
● 体外受精: | 100万円~(排卵誘発、採卵から受精卵凍結、1回の受精卵移植まで) |
注:体外受精の費用は、排卵誘発法や受精卵の培養方法、受精卵の凍結個数、移植方法等によって大きく変動します。
精子提供を希望するご夫婦向け
セミナーのご案内
本セミナーは終了しました。ご参加ありがとうございました。次回の開催が決定しましたら、当サイトにてお知らせいたします。
今年5月の開業以降、精子提供を希望するご夫婦の皆さまより多くのお問い合わせをいただいております。
そこでこの度、患者さまご夫婦及び医療従事者さまを対象に、当院が実施する「非匿名」の精子提供と家族形成についてご説明するオンラインセミナーを開催いたします。
詳しくは以下のページをご覧ください。
女性カップルや単身女性の
ご利用について
今後制定される新たな法律(仮称:特定生殖補助医療に関する法律)においては、精子提供の対象者が婚姻夫婦に限定される見通しです。当院は、日本産科婦人科学会の見解及び生殖補助医療の在り方を考える議員連盟が2023年11月に公表した新法たたき台の内容を基に、精子バンクを立ち上げています。
現在の日本の法律ではドナーの法的な地位が規定されていません。そのため、未婚の女性(「夫」をもたない女性)がドナー精子を使って妊娠・出産した場合に、ドナーが生まれたお子さまの法律上の父親とみなされる可能性があります。ドナーの法的地位を守り、学会の見解や法律に沿った運営を行うため、誠に恐縮ですが現時点では婚姻夫婦のみを当院の精子提供の対象とさせていただきます。
当院は、すべての人の性の健康に寄り添うことを理念として掲げ、2023年から東京レインボープライドにも出展しています。今後、すべての女性が生殖補助医療を受けることが認められ、しかるべき法律やガイドラインが整備されるよう、皆さまと共に声を上げてまいります。