精子ドナー登録とは
当院からドナーへの感謝
非匿名での精子提供について、日本では法整備が不十分で社会における認知も進んでいません。
そんな中で、自らドナー登録を志願して下さった方々に心よりお礼申し上げます。
皆さまのおかげでたくさんのご夫婦が子どもを産み育てるチャンスに恵まれます。
社会の中でこのような助け合いを実現できることに、当院も喜びを感じています。
皆さまには、ご提供いただいた精子の「その後」も継続的にご報告いたします。
皆さまからいただいたやさしさを、ご夫婦とお子さまに責任を持って届けてまいります。
ドナーになることの意義
ご夫婦やお子さまにとってのドナーとは
一般男性の100人に1人、不妊症の男性の10人に1人が無精子症と言われています1)。夫に精子がなければ、妻は人工授精や体外受精にチャレンジすることができません。バッターボックスにさえ立てないまま試合終了となる苦しみは、想像を絶するものがあります。
絶対的不妊により子どもを持つことを一度諦めたご夫婦が歩んでいく未来の中に、精子提供という選択肢があります。精子ドナーのおかげでご夫婦は再度立ち上がり、バッターボックスに立つことができます。お子さまを授かったご夫婦は、ドナーに対して言葉では言い尽くせないほど大きな感謝の念を抱きます。
生まれたお子さまにとって、ドナーは法律的にも社会的にも父親ではありません。精子提供によって家族をつくることを決断し、妻と共に不妊治療に取り組んだ人が、お子さまのただ一人の父親となります。血のつながりがなくても、おなかの赤ちゃんに話しかけ、生まれたお子さまとの日々の生活の積み重ねの中で親子の信頼関係を構築し、親としての責任を果たしていきます。
しかし、お子さまの遺伝的な半分を構成し、家族という木の幹を支えてくれたドナーは、ご夫婦のみならずお子さまにとっても大切な存在となります。精子提供で生まれた方の中には、ドナーに全く関心を持たない人もいれば、どんな人なのか知りたい、直接会ってみたいと思う人もいます。
ドナーとして感じる喜びと責任
当院のスタッフは、ドナーとして第三者に卵子を提供した経験を持ちます。親となったご夫婦からいただいた感謝の重みを日々噛みしめ、大きな喜びと責任を感じています。
提供によって生まれるお子さまはドナーの子どもではありませんが、ドナーとそのご家族にとっても大切な存在となります。当院では、ドナーに対して「提供精子によって生まれたお子さまの人数・出生年・性別及び居住都道府県」をお伝えし、ドナーと生まれたお子さま、親となったご夫婦をやさしくつないでまいります。
当院がドナーに期待すること
当院では、特に次のような方からのドナー登録を歓迎いたします。
- 精子提供によって生まれるお子さまの出自を知る権利の保障を大切に考えてくださる方
- 社会貢献の一つとして自分にできることに前向きに取り組みたいと考えてくださる方
- ご自身が子育てを経験し、親として感じている家族をつくることの喜びを、困っている方々と共有してくださる方
パートナーやご家族の方にもドナー登録の意義をご理解いただき、共に関わっていただけたら幸いです。
ドナー登録の条件
当院では、ドナーの遺伝子を残す手段としての精子提供は実施いたしません。第三者の助けがなければ親となることのできないご夫婦の気持ちを思いやり、利他の精神から精子を提供してくださる方を募集しています。
精子提供により生まれたお子さまが成人した後、ドナーの身元に関心を持った時、当院は自信を持って双方をおつなぎしたいと思っています。当院の目指す「やさしい仕組み」の輪に加わってくださる方をお待ちしております。
当院のドナーの条件として、日本産科婦人科学会の見解に基づき、以下の項目を定めます。
尚、治療を受けるご夫婦はドナーを選択することができず、当院にてマッチングを行います。親子の最善の利益を最大限に考慮し、人種、髪・肌の色及び血液型をご夫婦の夫側とできる限り揃えられるよう配慮します。(現在、当院では夫が日本人の場合にこれらの点を揃えることが可能ですが、夫が外国人の場合は人種や身体的特徴の近いドナーをマッチングできない可能性がございます)。趣味や提供動機など、ドナーの人となりが分かるような情報は、妊娠後のご夫婦にお伝えします。
精子ドナーの条件
- 1) 心身ともに健康であること
- 年齢20歳~45歳で、適正な身長と体重であること。
内服加療中の慢性疾患・精神疾患がなく、がん等の重篤疾患の治療中でないこと。 - 2) 感染症がないこと
- HIV(1型・2型)、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、クラミジア、淋菌、HTLV-1が陰性であること。
精液凍結保存後、一定期間後の再検査で陰性確認が必要。 - 3) 自己の知る限り遺伝疾患を認めないこと
- 特定の遺伝性疾患、先天性疾患、難病指定の疾患における家族歴がないこと。
- 4) 精液所見が正常であること(*)
- 精液の質が良好であり、凍結融解後に十分な運動精子が得られること。
- 5) 当院の精子提供の基本理念にご理解を得られること
- 当院で行う非匿名の精子提供につき、自分自身や生まれてくる子どもの権利について十分な理解をしていること。
外部の心理師による心理評価・カウンセリングにて、基本理念の共有を客観的に確認できること。
精子提供の終了後も、当院との関わりを続ける意向があること。 - 6) 当院との信頼関係を構築できること
- ご夫婦や生まれてくるお子さまへの思いやりの心を持っていること。
ドナーとしての役割を責任を持って果たす意志があること。
人とのつながりを大切にできること。 - 7) その他
- 他の医療機関・精子バンクで精子提供を行っていないこと。
個人間での精子提供を行っていないこと。
結婚している場合、配偶者の同意を得ていること。
日本語での意思疎通が可能であること。
犯罪歴がないこと。
高等学校を卒業されている方(高等学校卒業程度認定試験合格者を含む)。
*ドナーとして採用可能な精液所見について、凍結保存後に十分な運動精子が確保できることが条件となっています。そのため、ドナーとして採用されるのは、応募していただいた人の20~30%を見込んでおります。ドナーとして採用されなかったすべての人が精子の状況が悪いというわけではなく、自然妊娠できる状態である可能性もあることをご理解ください。精液検査の結果については、ご本人にメールまたは来院時に直接お伝えいたします。
※ドナー登録の条件は、新たな法整備が行われた場合に変更される可能性がございます。その場合には、本サイトでお知らせいたします。
生まれてくるお子さまのために開示するドナーの個人情報
当院の精子バンクでは、ドナーから以下の個人情報をご共有いただき、お子さま及び/またはご夫婦に開示いたします。
● 身元特定情報
氏名、登録上直近の居住都道府県、生年月日、電話番号、メールアドレス、希望する連絡手段
成人したお子さまから開示請求を受けましたら、以下の2点を確認いたします。
- 情報開示の影響につき当院からお子さまに説明し、お子さまが十分に理解していること
- お子さまの戸籍謄本に、当院の記録するご夫婦の氏名が「父」「母」として共に記載されていること
その後、お子さまから書面にて自己紹介及びドナーの身元情報の開示を希望する理由をご提出いただき、ドナーに共有いたします。必要に応じて何度か書面でのやりとりを行っていただいた後、ドナーに安心していただいた段階でドナーからお子さまへ身元情報を開示していただきます。万が一ドナーとの連絡が取れない場合は、当院からお子さまに身元情報を開示いたします。
お子さまがドナーとの面会をご希望され、ドナーにもご同意いただける場合、当院が仲介を行い、面会の実現を支援します。
● 病歴
ドナー本人及び二親等以内の自然血族(父母、兄弟姉妹、祖父母、子)の病歴・アレルギーの有無
ご夫婦の妊娠後、面談にて当院からご夫婦へ開示いたします(治療前・治療中には開示いたしません)。妊婦検診・分娩時や出産後の小児科検診にて、必要に応じて役立てていただきます。
● 身元非特定情報(プロフィール情報)
<身体的特徴やご家族の情報>
身長、体重、血液型、人種、海外ルーツの有無(祖父母まで)・ルーツ国、身体的特徴、子どもの頃(6歳頃まで)の写真(任意)、配偶者/パートナーの有無、実子の有無
<人となりを表す情報>
- ドナー登録時の職業・その職業を選んだ理由、趣味、性格診断の結果、あなたはどんな人ですか?、将来の夢や今後やりたいこと、精子提供の動機
- ご夫婦への手書きメッセージ
- お子さまへの手書きメッセージ
- 当院から見たドナーの印象(当院が記入します)
ご夫婦の妊娠後、面談にて当院からご夫婦へ開示いたします(治療前・治療中には開示いたしません)。お子さまへの告知の際に、お子さまの関心に応じて役立てていただきます。ご夫婦がドナーの存在を受け入れる上で、ドナーの人となりを知ることが安心につながることもあります。
※お子さまやご夫婦にお伝えできるドナー情報の範囲は、新たな法整備が行われた場合に変更される可能性がございます。その場合には、本サイトでお知らせいたします。
ドナー登録と精子提供の流れ
STEP1. お申し込みフォームからの必要事項入力
書類選考のため、本ページ下部の「お申し込み」ボタンをクリックし、オンラインで必要事項をご入力ください。
STEP2. LINEの友だち追加
書類選考を通過した方に、プライベートケアクリニック東京 精子バンクのLINE公式アカウントのURLをご共有いたします。友だち追加を行っていただきます。
STEP3. 精液検査予約
トーク画面メニューの「予約する」アイコンをクリックし、精液検査の予約を行っていただきます。
STEP4. 【来院①】精液検査(30~60分)
プライベートケアクリニック東京 東京院で採精を行っていただきます。当日の精液所見に加え、凍結・融解後の精液所見が当院のドナー基準を満たしているかどうか確認いたします。検査結果は後日オンラインでお知らせします。
STEP5. 【来院②】面談・問診・感染症検査/精子提供①(120~150分)
精液検査の結果が当院の基準値を満たす方には、医師面談・問診、感染症検査、スタッフ面談にお越しいただきます。
同日に、初回の精子提供を行っていただきます。(提供精子を凍結保管後、ドナーとして登録しなかった場合は廃棄いたします。)
STEP6. 心理師とのオンラインカウンセリング(30~40分)
外部の公認心理師による心理カウンセリングをご自宅からオンラインで受けていただきます。
STEP7. 【来院③】ドナー登録面談/精子提供②(45~60分)
当院のドナー基準を総合的に満たし、面談を通じて精子ドナーの役割を十分にご理解いただいた方に、ドナー登録を行っていただきます。ドナー登録後、2回目の精子提供を行っていただきます。
STEP8. 【来院④】面談/精子提供③(45~60分)
同意書・補償承諾書をご提出いただき、写真付き身分証明書のデータを登録させていただきます。尚、遠方にお住まいの場合は、各回の面談を長めに行わせていただくとともに、精子提供を4回目のご来院時(3回目の提供)で終了させていただく可能性がございます。
STEP9. 【来院⑤⑥】精子提供④⑤(各回 30~45分)
4、5回目の精子提供を行っていただきます。
精子提供は原則5回で終了させていただきますが、ご来院いただく日の体調等に応じて、精子の状態が当院の基準値を満たさないことがございましたら、改めて提供にお越しいただく可能性がございます。
※採精にかかるお時間に応じて、来院時の所要時間が変動いたします。
STEP10. 【来院⑦】面談・感染症検査(約45~60分)
5回目(遠方にお住まいの場合は3回目)の精子提供を行った3か月後にご来院いただき、スタッフ面談にて最終意思確認を行います。
その後、感染症検査を行い、精子提供期間中に感染のなかったことを確認します。
当院には合計7回(遠方にお住まいの場合は5回)ご来院いただき、すべての手続きの完了後に交通費や登録手続き・提供に要する時間に相当する補償をお振込みいたします。補償の金額は、居住地に関わらず一律とさせていただきます。適性検査にて当院のドナー基準を満たさなかった場合や手続きを完了されなかった場合は、恐れ入りますが補償をお渡しいたしかねます。
STEP11. オンラインでの情報更新
毎年1回、当院からオンラインでご連絡いたします。ご登録情報や病歴に変更がないかどうか確認させていただきます。宜しければ近況もお知らせください。
この際に、ドナーからのご要望がございましたら、ご提供いただいた精子により生まれたお子さまの人数、出生年、性別及び居住都道府県を当院からお伝えします。また、ご夫婦からのメッセージなどがあれば、随時お伝えします。
このほか、ご不安なことがございましたらいつでもご連絡ください。
STEP12. お子さまへの情報開示【18年後~】
一人のドナーからご提供いただいた精子により、最大で10組のご夫婦が出産に至ります。提供精子により生まれたお子さまの中には、ドナーの身元情報に強い関心を持つ方もいれば、全く関心を持たない方もいます。
お子さまからドナー情報の開示をご要望いただきましたら、ご連絡を差し上げます。お子さまから書面にて自己紹介及びドナーの身元情報の開示を希望する理由をご提出いただき、ドナーに共有いたします。必要に応じて何度か書面でのやりとりを行っていただいた後、ドナーに安心していただいた段階でドナーからお子さまへ身元情報を開示していただきます。
お子さまがドナーとの面会をご希望され、ドナーにもご同意いただける場合、当院が仲介を行い、面会の実現を支援します。
1) The epidemiology and etiology of azoospermia. Clinics (Sao Paulo) . 2013;68 Suppl1(Suppl 1):15-26.